Question



 Q.恋人 または 好きな人の可愛いと思う所をお答え下さい。

 開け放ってある窓から心地の良い風が吹いていた。強くなく弱くなく、眠気を誘う風だ。
 今、日番谷のデスクの上には一枚の紙が置いてある。「瀞霊廷新聞アンケ−ト」と書かれたそれは、伝達が多い瀞霊廷の唯一の情報機関「瀞霊廷新聞」の目玉とも言える隊長、副隊長アンケ−トの紙である。面倒だと思いつつも、実はマメだったりする日番谷はサラサラとアンケ−トの項目を埋めていく。が、不意にピタリと手が止まった。
 止まった部分には「恋人 または 好きな人の可愛いと思う所をお答え下さい」と書かれている。
 一応、日番谷には恋人と呼べる存在がいる。
 五番隊副隊長の雛森 桃がそれに当たる。そしてそれは周囲公認だ。余談だが、桃と日番谷が想いを通じ合わせた時、涙にくれた平隊員がそれは多く居たと言う話もあるが、真実は定かではない。 
 それは置いておいて、可愛いと思う所…全部と書いたら単なるバカップルである。何より日番谷がそう言う性格ではない。だから手が止まったのである。
 その状態で数十分が過ぎた。
 そろそろ日番谷の集中力も切れそうになる頃合である。そしてその通りでかなり集中力が切れかけていた日番谷の耳にふいに聞き覚えのある足音が聞こえてきた。
 パタパタパタ。
 リズミカルに走る足音は間違う事なく彼女の物だろう。何時もと変わらない足音に知らず、日番谷の口元に淡い笑みが浮かんだ。
 続く廊下をパタパタと歩んで、時折人に話しかけられて止まったり、人と話すのに止めたりして、また歩き出す。
 パタパタパタ……ベタンッ。バサァッ。
 明らかにこけた音と、おそらくは持っていた書類が散らばる音。起き上がった彼女はきっと周囲を見渡してアタフタとしている事だろう。安易に想像がついて、更に日番谷が笑みを深くする。
 起き上がった後の今はきっと、慌てて散らばった書類を集めている事だろう。チラリと窓から外を見れば、想像通りでしゃがみ込んでチマチマと動く姿が見える。
 そうして集めきった書類を抱えて、ここの詰所の前で立ち止まって声をかけてくるだろう。
「日番谷君−?」
 桃がこけると言う想像外の出来事があったにせよ、殆ど当たっている桃の行動に日番谷が笑う。これほど分かりやすい相手もいないだろう。
 それで思い至ったのか、日番谷が持っていた筆を動かした。白紙のままだった最後の項目の所に答えを書き込む。
 書き終わった時、ちょうど扉が開いた。
「いるんじゃない、日番谷君」
「あ−、悪い悪い。ちょっと色々とやっててな」
「ふ−ん……お仕事?」
「いや、瀞霊廷新聞とか言うののアンケ−トだ」
「あ、今度日番谷君の番なんだ−」
「めんどくさいけどな」
「楽しみにしてるのに、あたし」
「しないほうが良いぞ」
 書き終えた紙を逆さにして、飛ばないよう文鎮を置いておく。座っていた席を立ち上がり、桃がいるソファへと向かった。


 Q.恋人 または 好きな人の可愛いと思う所をお答え下さい。
 A.ドジな所、笑った顔


 後日、配布された新聞を見て、桃が日番谷の元を訪れる事となる。

日雛。
公共誌を使っての大々的な惚気(笑)