「……何だか…来るたびに増えてない? お菓子」
「あぁ」
テ−ブルの上に山盛りになったお菓子の山を見ながら、桃が呟いた。
饅頭、煎餅、羊羹と様々な種類の和菓子が山のようにテ−ブルの上に積んである。
「日番谷君が買った訳じゃないよね?」
「違う。これは浮竹の野郎が……」
甘い物が嫌いな筈の日番谷がお菓子を買う筈もなく。問うてみれば、思いがけない人物の名前が飛び出た事に桃が首を傾げる。
「浮竹隊長?」
「あぁ」
「な……なんで浮竹隊長が?」
「……冬獅郎と十四郎で名前の響きが似てるからだと」
「は?」
日番谷の口から飛び出した言葉に、桃が更に首を傾げる。頭の上でハテナマ−クが大行進している状態だ。
確かに、冬獅郎と十四郎の名前の響きは似ている。似ているが、それがどうしてお菓子を渡される理由になるのだろうか。
「良くは知らないけどな。会う度に食べ物渡そうとしてくる」
「……何かそれって…………」
日番谷の言葉に、桃が小さく苦笑する。
それはまるで。
「餌付けされてるみたいだね」
桃の言葉に、日番谷が固まる。
餌付けと言えば、あれだ。野生の動物に餌をやる事で人に慣れされると言う、あれ。
「………………」
日番谷の眉間にシワが寄る。
「冗談だからね? 名前の響きが似てたのが嬉しくて、構いたいだけなんじゃないかな?」
「…………」
「お−い、日番谷君?」
「……」
「お−い」
思考の渦に飲み込まれた日番谷に桃の言葉は聞こえなかった。
後日、相変らずお菓子の類を手渡してくる浮竹を訝しげに眺める日番谷の姿が見れたとか。