未来予定図

 木陰から差し込む光が、葉が揺れるのにあわせてユラユラと揺らめいた。差し込む光 は暖かく、吹く風は心地よい。
「私ね、昔、兄様のお嫁さんになりたかったのよね」
「…………はぁ?」
 あまりにも唐突な金糸の髪の少女の言葉に、その隣に腰を下ろしていたサスケが間の 抜けた声を上げた。優しい手つきで撫でられていたハクも主人の驚きが伝わったのか目 を丸くして、ゆやを見上げる。
「何だよ……いきなり」
「ん? 兄様にお嫁さんになるって宣言したのもこんな日でこんな場所なのよねー。ち ょっとそれを思い出しちゃった」
 クスリと小さく、ゆやが笑んだ。
「サスケ君は? 将来の夢とかなかったの?」
「……俺? 俺は……別に」
「じゃあ今は? 何か叶えたい夢とかないの?」
「今? 今……は」
 言いよどんで、チラリと隣にある顔を見上げる。向けられた視線に気が付いたのか、 ゆやがサスケの方へと視線を向けた。
「サスケ君?」
 小首を傾げる、この少女を護る事。
 それが今の願い。将来でもなければ夢でもない。今この瞬間に、したい事。夢と言う 曖昧な物ではなくて、やり遂げると心誓った強い思い。
 ただ一つ、願わくば。それが今に断定されずにずっと未来へと続いていく事。叶えた いと願うのはただ、それだけだ。
「……将来の夢とかじゃないけど……一応、ある」
「そっか。叶うと良いね」
「違うよ、姉ちゃん」
「?」
 フワリと笑ったゆやに、間髪いれずに言葉を返す。不思議そうにサスケを見つめる少 女に、サスケが小さく笑った。
「叶えるんだ、絶対に」
 力強く言い切った目の前の少年に、一瞬、面食らった表情を見せてから、再度、ゆや が微笑った。
「サスケ君なら出来るよ、きっと」

サスゆや。
夢と言う曖昧な物じゃなくて、実現させる未来。