心を込めて

 乾燥させた茶葉の入った筒を手にして、サスケは困り果てていた。
 生まれて十数年と言う年月が経ったが、一度もお茶など淹れた事はない。淹れる必要もなかったし、そう言った細かい作業は全て小助が好んで行っていたからだ。
 絶対に必要ないと高を括っていたお茶組みを急にしなければならなくなったのは、ひとえに想いを寄せる金の髪の少女の一言が始まりだった。
『サスケ君って……お茶淹れられるの?』
『……相変わらず唐突だね、姉ちゃん』
 前振りも何もあったものじゃない唐突な問いかけにサスケが苦笑を浮かべる。しかし、喜ぶべきか、否か。ゆやの唐突な問いかけに対して、サスケは既に慣れっことなってしまっている。
『で、どうなの?』
『淹れられないけど?』
『それなら、練習しよう』
『……は?』
 名案とばかりにポンと手を打って、ゆやがニッコリと笑顔を浮かべた。サスケが間の抜けた表情を浮かべる。
 突拍子もない発言で仲間達に間の抜けた表情をさせる事が出来るこの少女は色んな意味で最強なのではないだろうか、と一瞬考えてしまう。
『ちょっとお茶菓子買って来るから』
『え……姉ちゃん!?』
 サスケが止める間もなく、ゆやが宿屋を出て行ってしまう。静止しようとして伸ばされた手だけが空しく宙で止まっていた。
 そして冒頭へと至る訳なのだが。
 お茶菓子を買って帰って来たゆやは手伝うでもなく、ニコニコと笑って後ろでサスケの行動を見守っている。非常に向けられる視線が気にかかるのだが、言ってもゆやには意味がないだろう。諦めた溜め息を吐いて、小助がやっていた行動を思い出す。
 茶葉の入った筒を開けて、茶葉を適量、急須の中へと入れる。そこに沸かしてあった湯を注ぐ。そうして淹れたお茶は見た目こそお茶だが、味は非常に美味しくないと言う代物だった。
「……ごめん、姉ちゃん」
「初めてなんだから当然よ」
 非常に渋い味のするお茶を啜りつつ、ゆやがやんわりと笑んだ。
「でも……」
「味も大切だと思うけど、それよりも淹れ手の気持ちの方が重要だと思うわ、私は。相手を想って淹れるのが一番」
「そう……かなぁ」
「何回か練習すれば、美味しいお茶淹れられるようになるわよ。その時にもちゃんと相手を想って淹れてあげてね」
「……頑張る」

Web Crap Rog:SAMURAI DEEPER KYO(サスゆや)
いつから居たのかも記憶にないくらい頑張ってくれていました。飲み物がテーマで「日本茶」