お茶日和の午後

 ロザリア・デ・カタルヘナが256代目女王に、その補佐を務める補佐官にアンジェリ−ク・リモ−ジュが就いて、聖地時間で約半年の月日が過ぎた。
 交代直後こそアタフタとしたが、半年経った今、宇宙も落ち着き、平穏な時間が流れていた。
「こんにちわ、ルヴァ様、リュミエ−ル様」
 緩やかに波打つ金色の髪を揺らしながら、アンジェリ−クが近寄ってきた。補佐官の衣装でもある淡い桃色のドレスに身を包み、手には何やら茶色い封筒を持っている。
「こんにちわ、アンジェリ−ク」
「こんにちわ」
 地の守護聖は温和な笑みを浮かべ、水の守護聖は柔らかな笑みを浮かべて、女王補佐官を迎え入れる。
「お二人でお茶会ですか?」
「えぇ、そうなんですよ。リュミエ−ルが美味しいハ−ブティを持ってきてくれましてね。ちょうどお茶菓子もあったので」
 白磁のティカップを手にして、ルヴァがのほほんと言う。
 ほんわりと笑んで、アンジェリ−クは手にしていた封筒をルヴァに差し出した。
「王立研究院から預かって参りました。ルヴァ様にお渡しするように………と」
「それは有難う御座います」
 封筒を受け取り、中身を簡単に確認してから、それを執務室の机の上に置く。
「まだ仕事があるのですか?」
「いいえ。午前の仕事はこれで終了です。適当な時間休息をとってから戻って来い、と陛下から言われてます」
「ならば、お茶をして行きませんか? 美味しいお茶菓子もありますし」
 柔らかい笑みを浮かべたまま、控えめにリュミエ−ルが尋ねる。少し考える素振りをしてから、アンジェリ−クが微笑んだ。
「お菓子とリュミエ−ル様のハ−ブティに魅かれて、お邪魔します」
「変わりませんねぇ」
 女王候補であった頃と変わらない雰囲気と態度に笑いながら、ルヴァがアンジェリ−ク用の椅子を準備する。その横では、リュミエ−ルが丁寧な動作で白磁のカップに黄金色を注ぎ込む。
「良い香りですね」
「有難う御座います」
 ソ−サ−に置かれた白磁のカップをアンジェリ−クに差し出す。
 ふんわりとハ−ブの良い香りが漂う。
「最近、頑張っていますねぇ」
「そうですか? 相変らず、ジュリアス様には怒られてばっかりなんですけどね」
「ジュリアスは小言が多すぎるんですよ。あ、これは内緒ですよ」
“し−っ”とジェスチャ−をして、ルヴァが笑った。
 アンジェリ−クとリュミエ−ルもつられて笑う。
「結構、言う方だったんですね、ルヴァ様」
「知らなかったんですか?」
「えぇ、全く」
「知らない事を知れて良かったですね」
「ん−…知って良かったかは別の話です」
「おやおや」
 美味しいお茶とお菓子に、話が弾む。
 笑顔は絶える事なく、終始、和やかな雰囲気が流れる。
「あ、大変。そろそろ午後のお仕事始めなきゃ」
「本当ですね。私もそろそろ館に戻らなければ……」
「私もさっきの資料に目を通さないといけませんね−」
「す…すいません。お邪魔して、片付けもせず帰る事になってしまって…」
 頭を下げるアンジェリ−クに、ルヴァとリュミエ−ルが声をかける。
「良いんですよ。貴方は忙しいのですから。お気になさらずに、アンジェリ−ク」
「そうですよ。私とリュミエ−ルでやっておきますから。また、機会があれば一緒にお茶会でもしましょうねぇ」
「えぇ、また。今度は私が開催しますね」
「楽しみにしています」
「楽しみにしてますね」

アンジェリーク:アンジェ+ルヴァ+リュミエール。
この三人が好きです。