「………っ」

 冷たく冷えた指がツツッと背骨をなぞった。
 暖かい体と冷たい手。その温度差に、一瞬、ビクリとする。

「…ナルト君」
「と−さん…………分かってる? 理解してるってば?」

 うつぶせで寝転がった状態から、上体だけで振り向いて見てみれば、最愛の息子の顔には何処までも呆れた表情が浮かんでいる。
 居た堪れない――と言うより何も言えない父親は、ただ苦笑するしかない。

「大丈夫だと思ったんだよ」
「大丈夫そうに見えて、と−さん以外と歳喰ってんだから。無茶は禁物だってばよ」

 失礼極まりない事を口にして、更にはこれ見よがしに一つ、溜め息をついて、手にしていた白いシップを背中より少々、下――腰に貼り付ける。
 ヒンヤリとシップ特有の冷たさが何処か心地良い。

「大体。四代目火影が物持ち上げた程度で腰痛めてどうするんだってば?」
「あはは。鍛えなおす必要性ありかな〜」
「無茶したらまた痛めるってばよ」

 昼頃の事だ。
 里人の手伝いで重い荷物を持ち上げた四代目火影の腰が、それはそれは不穏な音を立てた。表現するならグキッ。
 何処からどう見て、どう考えても痛めたとしか思えない音。
 慌てた里人の知らせで、三忍の内の一人・綱手が見て判断した結果。それは、腰痛。名高い天才と言えども、歳には勝てないと証明されたある意味、情けない瞬間だった。

「姫も自来也も大蛇丸も呆れてたってば」
「………」
「ついでにじ−ちゃんも。情けないって言ってたってば」

 次々と出てくる名前に、四代目火影が眉間にシワを寄せた。
 里の中でも地位の高い三忍と、前代火影。四代目より歳は上だが、腰を痛めた事は一度もなく、皆息災。病や何気ない怪我から一番遠い人達でもある。

「………本当に鍛えなおそうかな」
「……暫くは安静にしとけって言ってたってばよ?」

 “誰が”とは言わない。
 四代目火影を見て、腰痛と診断した相手はたった一人しかいない。そして、その忠告とも命令とも読み取れる言葉を無視すれば、馬鹿にされた上で怒られる事は間違いないだろう。

「仕方ない。綱手姫の申しつけを破るわけにはいかないしね−。しばらく安静にしてるよ」
「それが良いってば」

 ニッコリと笑うナルトにつられるように、四代目火影も笑った。
 もっとも、その数日後。安静を解除された後はたまりに溜まった仕事に追われる事となる。


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 四代目+ナルト。
 仲良し親子です。
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