君に
「コレ」
「え?」
短い言葉と共に差し出されたのは、少し大きめの兎のぬいぐるみ。白くて、頬がピンクがかっていて可愛らしい。
受け取った後で、ぬいぐるみと渡した相手である不二を交互に見る。
「…不二先輩?」
「何?」
「これは?」
「ぬいぐるみ好きって言ってなかったっけ?」
「言いましたけど」
「姉さんがね、ぬいぐるみを貰ったのは良いんだけど、ぬいぐるみの歳じゃないからって僕にくれたんだ。だけど、僕も貰っても困るからね。だから桜乃ちゃんにあげようと思ったんだけど……要らなかった?」
「え……そう言う訳じゃ……」
ぬいぐるみを抱えたままで、桜乃が言いよどむ。
要らない事はない。確かにぬいぐるみは好きだし、手にあるぬいぐるみは可愛らしい。
だけど、自分が貰っても良いのだろうか?
「いいんですか? 私が貰っても。不二先輩なら、誰でも貰ってくれると思いますけど」
「桜乃ちゃんにあげたいって思ったんだよ」
にこやかな笑みと共に言われた言葉に、桜乃が頬を微かに染めた。笑顔でそう言うセリフをサラリと言うのは反則だ。
「……そう言う事言うの、反則ですよ」
「そう?」
「そうです。反論出来ないじゃないですか……」
抱えたぬいぐるみに顔を埋めて、ポツリと桜乃が呟いた。それを聞きとめて、不二が笑みを深くする。
「不二先輩……」
「何?」
「ぬいぐるみ、有難う御座います。大切にします」
「そうしてくれると僕も嬉しいよ」
顔を見合わせて、フワリと笑いあった。
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テニプリ 不二桜。
久々過ぎて偽者度100%。書いてて可愛らしいCPなんですけどもー。
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