疑問
「ねぇ、ロック」
明るく艶やかな緑色をした髪をまとめながら、ティナが口を開いた。
愛用の短剣を丁寧に磨く手を止めないままで、「ん−?」とロックが生返事を返す。
「“丸天井”って何?」
疑問を口にして、ニコッと笑いかける。
あまりと言えばあまりに突飛過ぎる質問に、ロックが手を止めた。短剣に向けていた顔を上げて、向かいに座るティナを見る。
「…丸天井?」
「うん」
「知らないのか?」
再度問い直すと、コックリと深く頷いた。
ほんの数ヶ月前まで自我すら無かったのだ。知らなくても当然である。それに、“戦闘兵器”が戦闘に関係のない事を知る必要など、何処にもないのだから。
だがそれも数ヶ月前までの話。
今は“兵器”ではなく自我を持つ“人”。何も知らない状態のティナは何でも人に聞く。そして知識を増やしている真っ最中なのだ。
「丸天井ってのはな、半円級の形をした天井の事でな………」
ツツ−と、ロックの指が宙に弧を描く。
丸く、丸く、ラインを描いて、“丸天井”について説明していく。
「あれ?」
丸天井についての一通りの事を聞いた後に、ティナが指差したのは部屋に光を取り込む為にある窓。その窓の外には小さく半円球の形をしたド−ム状の屋根を持つ家が見える。
「あれは違う」
「そうなの? だって半円の形してるよ?」
不思議そうにティナが尋ねてくる。それにロックが頭を抱えた。
口で説明するだけではティナには効果がない。ならば直接、丸天井がある場所へ行って見せた方が早いし、分かりやすい。
だが、丸天井がある場所――――そんな場所は中々ない。どうしたものか、と思った時にふと、思いだした。
「エドガ−の所だ」
「エドガ−?」
ロックのセリフに、ティナが首を傾げた。
「アイツが住むのは城だからな。丸天井くらいあるだろ」
「そうなの?」
「多分な。あんまり気にして見た事ないからな−、天井なんか」
「何時か、見れると良いな」
「見れるだろ。今は無理だけどな。帝国倒して、平和が戻れば何処でも行けるさ」
「その前に、私は色々と勉強する事がありそうだけど」
言ってティナが小さく苦笑を浮かべる。それを受けて、ロックが快闊に笑った。
「心配すんなって。俺が色々と連れまわすから」
一瞬、キョトンとした表情を浮かべてから、花が綻ぶように、柔らかく華やかな笑顔を浮かべた。
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Final Fantasy6 ロック+ティナ
反帝国組織アジト到着直後くらい?
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