木陰でお昼寝
「先生!? 何処いったんですか!!」
太陽の光を浴びて、銀の髪がキラキラと輝いていた。
大声で怒鳴りながら、すぐ傍を通り過ぎていく教え子の生徒をやり過ごして、金の髪に青い瞳を持つ青年は、同じ色彩の子供と顔を合わせて笑った。
「カカシ兄ちゃん、行っちゃったってばよ」
「だね。ここにいるのも気付かないなんてね」
“あれで上忍って大丈夫かな−?”と首を傾げて、小さく呟けば、幼子も“かな−?”と語尾を真似する。
「でも、と−さんは火影だから気付かなくて当然だってば!」
「そうかな−…」
ビシリと正論をナルトが口にする。
それに不満そうなのは正論を言われた四代目火影・ミナトの方だった。
「そうだってば」
「何か納得いかないけどな−…まぁ、折角カカシ君やり過ごしたし…さ、いこっか」
「おうってば!」
完全に姿も気配も感知出来なくなった事を確認して、ミナトが立ち上がった。
火影の証でもある服の裾を手で叩き、ナルトを立たせる。
「何処行くんだってば?」
随分と上の方にあるミナトの顔を、ナルトが見上げた。
前方に向けられていた視線が降りてきて、ナルトを見る。
「ん、折角の良い天気だからね。風通しの良いトコでも行って、のんびりしよ−かなって」
「………仕事は?」
「………………………………………オワッタヨ?」
返答までの長い間と、片言日本語から嘘だと判断する。
そもそも、仕事が終わっているのなら先ほどみたいにカカシが怒鳴りながら探しに来たりはしないのだ。
「…適当な時間になったら戻るってばよ」
「あはは……」
小さく溜め息を吐く子供に、苦笑を返す。
ナルトの予想通り、実はまだ沢山仕事が残っている。それでも、折角の良い天気に、執務室に閉じこもって仕事尽くしなんて真っ平御免で。
たまたま様子を伺いに来たナルトを説き伏せて、執務室を飛び出してきたのだ。
「もうすぐだよ」
里中から森へと風景は変わっていって。
最終的には里を見下ろせる高台――火影岩の上に辿り着いていた。
「確かに風通しは良いけどよ−……」
“暑いってばよ?”と首を傾げて、問う。
巨岩の上は遮る物がないから風通しの良さは抜群だろう。だが、遮る物がないと言う事は、太陽の光を遮るものがないのだ。
まだ昼を過ぎて少々の時間帯。幾ら何でも暑い事この上ない。
「平気、平気」
そう言って指差した先にはちょうど良い大木。
覆い茂った葉は若草色で、太陽の光を浴びて、地面に輝く黄緑の影を落とす。
「ここでしばらくボ−ッとしてよう」
ニッコリと笑って、サッサと木陰に腰を下ろしたミナトを追って、ナルトも木陰に腰を下ろす。
緩やかな風は、花や緑の匂いを引き連れて、辺りを通り過ぎていく。太陽の光を遮っている木の下は涼しくて、心地が良い。
「お団子とか持ってくるべきだったかな−」
「だったってばよ」
青く澄んだ空を見上げつつ、淡々と会話を交わす。
だけど、木陰と吹く風の心地良さに睡魔が誘われない訳がなくて、段々と視界がぼんやりとし始める。
睡魔に抵抗する間もなく、辺りには穏やかな寝息が二つ、し始めた。
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四代目+ナルト(6歳前後)。
有能だけど脱走魔な四代目。
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