それは祈りにも似た
パチンと音を立てて、刀を鞘に仕舞う。
簡単に折れてしまいそうな程に小柄で華奢な作りの小太刀は今は亡き優しい刀匠の、最後の作。困難にぶつかるであろう少女の為に、村正がありったけの念と想いを込めて作った守る為の小太刀だ。
「小太刀?」
優雅ではあるが、ゆやが持つには余りにも不自然な物を見止めて、サスケが声をかけた。
「あ、うん。村正さんが、作ってくれたの」
「村正が?」
「そう。くじけず生きていけますようにって」
呟いて、ゆやが小さく笑みを浮かべる。
命に期限を作られたゆやが、それでも強く、くじけず、諦めず生きていけるよう願っ た村正の想いと祈りを形にした物。
刀の機嫌や想いを読み取れる訳ではないが、ゆやの手にある小太刀はどことなく優しく包み込むような感じがある。
「そっか。姉ちゃんが心配だったんだな、村正」
「そうかなぁ……」
「そうだと思う。姉ちゃん、放っておくと何でも首突っ込むし、無茶するし」
「ちょっと待って。そう言う意味の心配なの!? と言うか、それは酷くない、サスケ君」
聞き流すには余りなセリフにゆやがジトリとサスケを睨んだ。対するサスケはそれを気にした様子もなく笑っている。
「じゃあ、姉ちゃんは無茶してないとでも?」
「それは勿論」
「……」
「……そりゃちょっとくらいは無茶するけど」
「……」
「………………すいません、割と無茶します」
「わかってくれると俺も助かる、姉ちゃん」
サスケの無言の圧力に耐え切れなくなったゆやが謝罪を口にする。
確かに無茶している自覚はあるけれども。仕方がないのだ、気付いたら体が勝手に動いているのだから。決して無茶したい訳ではないのだ。
「やっぱり、そんな姉ちゃんが村正は心配だったんだよ」
「うー……」
「それに期限の事もあるし」
「……」
「心配だったんだよ、姉ちゃんがくじけないでいてくれるかどうか。諦めずにいてくれるかどうか」
「……」
巻き込んでしまった事を、悔やんでいたのかも知れない。
村正の所為ではないし、ゆや自らが選んできた選択の結果とは言え、壬生一族の問題に巻き込み、命の期限まで作ってしまったその事を。
今となっては、真実を知る術はないけれど。
「サスケー、ちょっと」
「今行く、幸村。姉ちゃん、俺ちょっと」
「うん、行ってらっしゃい」
幸村の方へと駆け出すサスケに手を振りながら見送って、チラリと青く澄み渡った空へと視線を向ける。
「……絶対にくじけたり諦めたりしません、村正さん」
どんな真実を知ろうとも。
どんな困難に出合おうとも。
――諦めず、くじけずに、生き続けてみせるから。
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SAMURAI DEEPER KYO :: サスケ+ゆや
ところで、最終戦後、守りの小太刀はどうなったんでしょう?
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