奏でる音


 クラリネットの音に、フル−トが重なり、トランペットが重なり、更にヴァイオリンの音色が重なり、低く、チェロの音も重なった。
 五つの音が重なり合い、綺麗な旋律を奏でる。空高く響き、余韻を残して、大気に紛れて消える。
 聞き惚れる一瞬の間。置いて上がるのは、盛大な惜しみのない拍手。

「楽しかった−」

 マウスピ−スから口を離して、開口一番、火原がそう叫んだ。火原のように叫んだりはしないものの、他の面々もそう思っているのだろう。顔に穏やかな笑みを浮かべて頷いている。
 第三セクションも終わり、学内コンク−ルに出る他のメンバ−とも程ほど仲良くなった事で、五重奏がしたい、と言い出したのは香穂子だった。
 それに火原が賛同し、半ば無理矢理の形で柚木を巻き込み、更には後輩でもある清水と冬海を巻き込んで、五重奏を行う事が決定した。
 トランペットとヴァイオリン、フル−ト、クラリネット、チェロ。五つの楽器を使って演奏できる曲の楽譜を金澤に提供して貰い、個人練習をして、放課後に合わせて練習をする事、数週間。
 本日、初めての人前での合奏。結果はまずまずと言った所か。

「……先輩。一箇所、音外しましたよね?」
「…気付いた?」
「意外と目立ちますよ、あれは」
「注意します」

 自分でも気になっていたのだろう、香穂子が小さく苦笑を漏らす。

「中々、楽しかったよ、日野さん」
「また機会があったら、やろうね、日野ちゃん」
「はい」


post script
 合奏と言う事で、コルダから日野、冬海、火原、清水、柚木の五人。……音楽は私の範疇外ですので、変な所があっても悪しからず。
 ものすごく短いです。
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