繋がる、伝わる


 淡い色合いをした携帯を握り締めて、みちるが小さく溜め息を吐いた。
 メ−ルアドレスと携帯の番号を教えて貰って、自分のも教えた。メ−ルを送るとも、くれるとも約束をしていない。
 だから、メ−ルが来る確立は果てしなく低い。それでも期待をして、携帯が鳴り出すのを待ってしまう。
 握り締めた手を離して、ピクリともしない携帯に目を落として、また溜め息を吐く。
 それの繰り返し。


 馬鹿だとも、不毛だとも思うけれど。
 それでも、メ−ルを送る事も、電話をする事も出来ないでいる。


 最近、メジャ−デビュ−を果たしたパラキ−ト。今まで以上に忙しくなって、中々、シンと会う事もままならない。
 メジャ−デビュ−は彼らの夢で、その夢が叶って喜ばしい気持ちと同時に淋しさもある。一ヶ月、二ヶ月会えない事も多々ある。
 時折、短いメ−ルがシンから届き、それに返事を返す。それだけが会えない間に行う些細なやり取り。

 ―――――寂しい。

 一人でいる事に慣れたとは言え、決して、大丈夫な訳ではないのだ。
 寂しいものは、寂しい。

 無性に、シンに会いたかった。

 その気持ちが届いたのか、それとも偶然か――後者だろうが。
 タイミング良く、携帯が音を奏で始めた。すぐに分かるように、と変えてあるシン専用のメロディ−を。

「みちるちゃん?」
「……はい」
「ん。タイミングバッチリ」
「……はい?」

 何やら頷いているような気配が電話越しに伝わってきて、みちるが首を傾げた。
 何のタイミングがバッチリなのやら。

「明日、休みだから」
「……」
「会おう」

 伝えられたのは、たった一言。
 短く簡潔な言葉。

 今一番、みちるが欲しかった言葉。

「………はい…」

 フワリと嬉しそうに微笑んで、みちるが頷いた。


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 Fun Fun 工房:シンみち。
 ちょっとみちるの独白のような。
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