ロングヘア
「…髪、伸ばそうかなぁ…」
長くも短くもない金の髪に触れつつ、ナルトが呟いた。決して大きな声ではなかった筈なのに、聞こえていた四代目火影の驚きようは凄かった。
効果音を付けるなら“ガガ−ン”と言った所だ。
「ナ……ナルト君っ!?」
判を押す途中だった書類を放り出して、ミナトがナルトに詰め寄った。
「な…何だってばよ……」
思わぬ勢いで詰め寄るミナトの態度に、ナルトがタジタジになる。
「お父さんは認めないからね! 長髪なんて!!」
「何で?」
「何でも。忍者は短髪で良いんだよっ!!」
「でも……ネジとかイタチ兄とか大蛇丸とか自来也とか姫とかは長髪だってばよ?」
指折り数えつつ、ナルトが長髪の忍者の名を上げた。ついでに首を傾げて、ミナトを見上げる。
「それはそれ、これはこれ。…ってか、綱手姫は女性でくの一だから関係ないよ」
「…何で駄目だってば?」
「自分の方が敵よりも強ければ兎も角、実力的にそう大差なかった場合、髪とか掴まれてピンチになる可能性がないとは言えないだろう?」
「そ…それは……」
真剣な瞳で、言い聞かせるように語る。
「それに、ナルト君の髪の色は金だから。金色で長髪なんて目立つよ? 夜とか。闇に紛れ込めない」
「う……」
ミナトの言い分には、一理も二理もある。
陽の光を集めたような金の髪は、光を浴びるとキラキラと輝く。綺麗ではあるけれど、忍として闇に紛れての隠密活動を必要とされた時には、気をつけなければならなくなる。
暗闇に金の髪はえらく目立ち、格好の的となるだろうから。
「ナルト君が誰を相手にしても負けない自信がついたら伸ばせば良いよ。それまでは駄目だよ」
ニッコリと。
笑って言われたセリフに、ナルトは反論が思いつかない。
「返事は?」
「分かったってばよ−」
渋々頷いたナルトを見て、満足そうにミナトも笑った。