雰囲気的な10のお題 穏
木漏れ日の午後
緩やかに吹く風に、木々の枝が揺れて、サワサワと微かな音を立てる。
耳に心地よいその音は、その下で眠る人物の為の子守唄のように静かで優しい。
「……」
覆い茂った葉の間から差し込む光が、揺らめいて落ち着かない。時折顔に当たって眩しいその光が眠りを邪魔しないだろうか。
急に心配になって、桃は隣に顔を向けた。
「寝てる……よね? 多分」
隣に座る幼馴染はスヤスヤと穏やかな寝息を立てていて、起きる気配はない。顔に当たる光が眠りを妨げる事はなかったらしい。
その事実に、ホッと小さく溜め息を吐いた。日番谷が持ったままの書類を彼の手からソッと外した。ついでとばかりに眉間によったシワに指を当てて、グリグリと弄る。
その行為が嫌なのだろう。日番谷が低く呻き声を上げる。が、桃はお構いなしだ。常によっている眉間のシワ。寝ている時くらいは無くしてあげたい、との思いからの行動だが、その行動が更に眉間のシワを増やしているとは気付かない。
「……何してんだ、お前は」
「!? お……起きたの!?」
瞼が開かれて翡翠の瞳がジィッと桃を睨みつける。突然の事に、桃がビクついた。
「……眉間に指やられた時点で気付かねぇ訳ないだろーが。んで? お前は人の眠りを邪魔して何してんだ?」
「べ……別に邪魔した訳じゃ…………」
「…………」
「眉間のシワ固定しちゃマズイなーと思って……ただそれだけで……」
「そりゃ余計なお世話をどうも」
「わ……悪気があった訳じゃ……」
「あったら怒るぞ、俺は」
怒気を含ませながら言い放って、もう一度、日番谷が木の幹に身を寄りかからせる。――――今度は桃を伴って。
「わっ……日番谷君?」
「お前も寝ろ。また眠りの邪魔されるのはごめんだからな」
「……休憩終わるよ?」
「気にすんな」
それだけ言うと、日番谷から再び、穏やかな寝息が上がりだす。
気にすんなと言われても気になるものは気になる。が、手をつかまれていて、外れない。どうやら諦めるしかないらしい。
「……たまにはいっか」
総てを諦めた溜め息を一つ落として、桃も瞼を閉じた。
木漏れ日が優しく二人を照らすそんな午後のひと時の話。
耳に心地よいその音は、その下で眠る人物の為の子守唄のように静かで優しい。
「……」
覆い茂った葉の間から差し込む光が、揺らめいて落ち着かない。時折顔に当たって眩しいその光が眠りを邪魔しないだろうか。
急に心配になって、桃は隣に顔を向けた。
「寝てる……よね? 多分」
隣に座る幼馴染はスヤスヤと穏やかな寝息を立てていて、起きる気配はない。顔に当たる光が眠りを妨げる事はなかったらしい。
その事実に、ホッと小さく溜め息を吐いた。日番谷が持ったままの書類を彼の手からソッと外した。ついでとばかりに眉間によったシワに指を当てて、グリグリと弄る。
その行為が嫌なのだろう。日番谷が低く呻き声を上げる。が、桃はお構いなしだ。常によっている眉間のシワ。寝ている時くらいは無くしてあげたい、との思いからの行動だが、その行動が更に眉間のシワを増やしているとは気付かない。
「……何してんだ、お前は」
「!? お……起きたの!?」
瞼が開かれて翡翠の瞳がジィッと桃を睨みつける。突然の事に、桃がビクついた。
「……眉間に指やられた時点で気付かねぇ訳ないだろーが。んで? お前は人の眠りを邪魔して何してんだ?」
「べ……別に邪魔した訳じゃ…………」
「…………」
「眉間のシワ固定しちゃマズイなーと思って……ただそれだけで……」
「そりゃ余計なお世話をどうも」
「わ……悪気があった訳じゃ……」
「あったら怒るぞ、俺は」
怒気を含ませながら言い放って、もう一度、日番谷が木の幹に身を寄りかからせる。――――今度は桃を伴って。
「わっ……日番谷君?」
「お前も寝ろ。また眠りの邪魔されるのはごめんだからな」
「……休憩終わるよ?」
「気にすんな」
それだけ言うと、日番谷から再び、穏やかな寝息が上がりだす。
気にすんなと言われても気になるものは気になる。が、手をつかまれていて、外れない。どうやら諦めるしかないらしい。
「……たまにはいっか」
総てを諦めた溜め息を一つ落として、桃も瞼を閉じた。
木漏れ日が優しく二人を照らすそんな午後のひと時の話。