雰囲気的な10のお題 穏
手を繋いで
((危なっかしいなぁ……))
山の様に積まれた洗濯物のカゴを抱えて、明らかにフラフラと歩く少女の姿を見止めて、ヨイヤが苦笑を零した。
手伝いの申し出を断ったのか、たまたま周りに誰もいなかったのか――――彼女の性格を考えると、おそらくは前者だろう。
前方が見えていない状態で転んで怪我でもしたらどうするつもりなのだろう。
シスコンな同盟主に心配をかけるのつもりなのだろうか――彼女にそう言うつもりはないだろうが。たまたま溜まっている洗濯物に目がつき、たまたま暇を弄んでいた自分がすればいいと思ったに違いない。
ならば、彼女をたまたま見掛けた自分が手伝っても、問題ない筈だ。
「ナナミ」
落ち着いた声音を聞き止めて、抱えた洗濯物ごとナナミが振り返った。
姿は見えないが、今、側にいるのはヨイヤで間違いはないだろう。
「ヨイヤさん?」
「大荷物だね」
「溜まってたの目についちゃって……私暇だったから」
予想と寸分違わぬ答えに小さく、ヨイヤが笑う。
「手伝うよ」
「え……大丈夫、大丈夫! 私一人で何とかなるから」
「フラフラ歩いてる人の何処だ大丈夫なのかな?」
これ以上の問答は不要とばかりに、ヨイヤがナナミの腕からカゴを取り上げる。
「あ!」
「……こんな状態でよくここまで歩いて来れたね、ナナミ」
前が見えない事は予想済みだった。が、予想以上にバランスが悪い。
高く、高く積み上げられた洗濯物の塔は油断すると上から崩壊しそうにアンバランスだ。本当に、よくここまで洗濯物の塔を崩さず、転ばず来れたものだ。
「わ……私持つから!」
「駄目。危ないから」
「それはヨイヤさんも一緒でしょ!」
「いいんだよ、僕は。転んだくらいじゃ怪我しないから」
「私だって転んだくらいじゃ怪我しないわよ」
「そうだろうけど。ナナミの場合、転んだってだけで取り乱すのがいるから」
「!」
ヨイヤの言う“転んだだけで取り乱す”人物に思い当たって、ナナミが言葉に詰まった。
「怪我なんかしたら、悲しむよ? 見たいの?」
「……ヨイヤさん、ずるい」
「そう?」
「私がアカツキの名前に弱い事知ってるくせに……!」
「ここまで言わないと、ナナミ諦めないからね」
ナナミの反論に、ヨイヤがニッコリと――一見、爽やかに見える顔で――笑ってみせる。
「〜〜〜〜〜〜」
何やらしてやられた気分で一杯だが、ナナミがヨイヤに勝てる筈がない。
「わかった、諦める……けど、何か手伝う」
言いくるめられて諦めはしたけど、手伝わないのは気が引ける。
「……仕方ないなぁ、じゃあ、手」
「え?」
「手を繋いでくれるかい?」
器用に片手と体でカゴを支えながら、ヨイヤが手を伸ばす。
「前が見えないからね」
「……見えなくても平気なくせに」
「平気だけど、繋いで貰うのもいいかなって」
ニコニコと笑うヨイヤに何を言っても無駄な事は明白で。諦めた様に小さく溜め息を吐いて、差し出された手を繋いだ。
余談だが、手を繋ぐヨイヤとナナミの姿を見たシスコン盟主が、自分の物は自分で洗う様に取り決めたとか。
山の様に積まれた洗濯物のカゴを抱えて、明らかにフラフラと歩く少女の姿を見止めて、ヨイヤが苦笑を零した。
手伝いの申し出を断ったのか、たまたま周りに誰もいなかったのか――――彼女の性格を考えると、おそらくは前者だろう。
前方が見えていない状態で転んで怪我でもしたらどうするつもりなのだろう。
シスコンな同盟主に心配をかけるのつもりなのだろうか――彼女にそう言うつもりはないだろうが。たまたま溜まっている洗濯物に目がつき、たまたま暇を弄んでいた自分がすればいいと思ったに違いない。
ならば、彼女をたまたま見掛けた自分が手伝っても、問題ない筈だ。
「ナナミ」
落ち着いた声音を聞き止めて、抱えた洗濯物ごとナナミが振り返った。
姿は見えないが、今、側にいるのはヨイヤで間違いはないだろう。
「ヨイヤさん?」
「大荷物だね」
「溜まってたの目についちゃって……私暇だったから」
予想と寸分違わぬ答えに小さく、ヨイヤが笑う。
「手伝うよ」
「え……大丈夫、大丈夫! 私一人で何とかなるから」
「フラフラ歩いてる人の何処だ大丈夫なのかな?」
これ以上の問答は不要とばかりに、ヨイヤがナナミの腕からカゴを取り上げる。
「あ!」
「……こんな状態でよくここまで歩いて来れたね、ナナミ」
前が見えない事は予想済みだった。が、予想以上にバランスが悪い。
高く、高く積み上げられた洗濯物の塔は油断すると上から崩壊しそうにアンバランスだ。本当に、よくここまで洗濯物の塔を崩さず、転ばず来れたものだ。
「わ……私持つから!」
「駄目。危ないから」
「それはヨイヤさんも一緒でしょ!」
「いいんだよ、僕は。転んだくらいじゃ怪我しないから」
「私だって転んだくらいじゃ怪我しないわよ」
「そうだろうけど。ナナミの場合、転んだってだけで取り乱すのがいるから」
「!」
ヨイヤの言う“転んだだけで取り乱す”人物に思い当たって、ナナミが言葉に詰まった。
「怪我なんかしたら、悲しむよ? 見たいの?」
「……ヨイヤさん、ずるい」
「そう?」
「私がアカツキの名前に弱い事知ってるくせに……!」
「ここまで言わないと、ナナミ諦めないからね」
ナナミの反論に、ヨイヤがニッコリと――一見、爽やかに見える顔で――笑ってみせる。
「〜〜〜〜〜〜」
何やらしてやられた気分で一杯だが、ナナミがヨイヤに勝てる筈がない。
「わかった、諦める……けど、何か手伝う」
言いくるめられて諦めはしたけど、手伝わないのは気が引ける。
「……仕方ないなぁ、じゃあ、手」
「え?」
「手を繋いでくれるかい?」
器用に片手と体でカゴを支えながら、ヨイヤが手を伸ばす。
「前が見えないからね」
「……見えなくても平気なくせに」
「平気だけど、繋いで貰うのもいいかなって」
ニコニコと笑うヨイヤに何を言っても無駄な事は明白で。諦めた様に小さく溜め息を吐いて、差し出された手を繋いだ。
余談だが、手を繋ぐヨイヤとナナミの姿を見たシスコン盟主が、自分の物は自分で洗う様に取り決めたとか。